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Artist's commentary
碧の書庫(エメラルド・ライブラリー):ルミナ・シオラ
王国の泉の辺りに立てられた、青緑色のステンドグラスが魅惑的なミラビリス・ノイド。
その建造物の姿はまるで船(アーク)を連想させた。
その建造物の心は尾を持った少女のようであり、少年のようでもある。
音楽と芸術についての蔵書が所狭しと並べてあり、自動演奏機は楽しげに鳴り響いている。
半球状の天井を持った正面玄関は音が良く響く構造となっている。
建造物の心は物静かで、口数の少ない穏やかな性格だった。
王子であるマユハが音楽を気に入って書庫に訪れても、
ルミナ・シオラはどのように声をかけていいのか分からずおどおどと落ち着かないことが多かった。
マユハは気にせず、書庫が愛する音楽を聴いていた。
音符を過剰に怖がるものは、雑音を連想させる音楽自体を忌み嫌い、
この書庫もまた忌み嫌われた。マユハは音楽が邪悪であるとさほど感じなかった。
ただ、ルミナ・シオラの愛する音楽から時々感じる妖しい色っぽさにはマユハはぞくぞくと
恐ろしさを感じることはあった。
「ねえ・・・えっと・・僕、この歌がすきなんだけど、どうですか?」
「えっと・・もっとここで歌を聞いていてくれませんか・・えっと・・なんでもないです・・」
「君は・・僕を怖いと思わないのですか?・・ねえ・・じゃあ・・きっといつか・・みんなも・・なんでもないです・・」