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Artist's commentary
人さらい/Rag Man
暗くなりかける街の路地の、奥へ奥へと二人は進んでいった。
前を行く人物の影は全身にまとった布でも隠せないほどゆがんでいたが、その体からは想像出来ない速さで歩を進めていく。
手を引かれている少女は、半ば引きずられるように着いて行くのが精一杯だった。
「ねえ、本当に父さんと母さんに会えるのね?」
不安と期待の入り混じった声で少女が聞く。
問いかけられた人物は、僅かに頷いたかのようにみえた。
頭からかぶったぼろ布で顔は覆われ、その奥にあるはずの表情は見えない。
だが、その動作だけで少女は破顔し、足を早めた。
しかし、彼女の手首をつかむ手の指は、冷たくとがりすぎてはいないだろうか。ぼろ布でぐるぐる巻きの腕は長すぎてはいないだろうか。
突然行方が知れなくなってしまった両親に会えるという希望に、少女の疑念はすっかり消えてしまっていた。
ただ、彼は嘘をついているわけではないし、ある意味では少女の選択は間違ってはいないのだ。
翌朝になれば街から彼女の姿は消えて、両親と同じ所にいる事だろう。彼こそが、人さらいなのだから。