
Artist's commentary
#さかまた飼育日記
《さかまたと同居するってマ?⑪》
「ただいまー」
家に帰ると彼女はリビングのソファーで寝落ちしていた。
友達との久しぶりの会食ということもあり遅くなってしまったのだが、健気に待っていてくれたのだろうか。
そういえば、買い出しを除き彼女が出かけることはあっても逆はあまりなかったな。
寂しい思いをさせてしまって申し訳なく思った。
指でつんつんしてみる。
ぷにっとして柔らかく心地いい感触だ。
もう一回押してみる。
それでも起きない。
あっ、起こしちゃ悪いか。
「待っててくれてありがとうな。大好きだぞ」
そっと毛布をかけてあげた。
翌朝、彼女は珍しく早起きをして朝ご飯を作ってくれていた。
あったかいみそ汁を飲むとまさに新婚の夫婦感を感じられてすごく良い。
「昨日はよく眠れたかい?」
そういうと彼女はポッと顔を赤らめおかげさまでといった。
そして夢で見たしゃべるキノコのことを楽しそうに話してくれた。
「さかまたってそんな乙女チックな夢見るんだな」
「それ、どういう意味?」
ジト目で不服そうだ。
「いや、別に変な意味じゃなく。ほら、さかまたの可愛さって生クリームの上にシロップかけましたみたいな感じと違ってどちらかというとビターチョコレートを使った甘すぎないガトーショコラって感じの方が僕的にしっくりくるっていうか好きなんだよな」
「ふーん、ありがと……」
「こちらこそ昨日は待ってくれててうれしかったよ。朝ご飯もすごくおいしかったし、よかったらまた作ってほしい」
「昨日はちょっと寂しかっただけで一緒に映画見たりもしたかったし……今日はたまたまそういう気分だっただけで別にそういうのじゃないんだからね」
もじもじしながら、時折こっちに視線を向けてボソボソと言っている。
「わかった!今度、なんか一緒に見よう!」
「ほんと?」
彼女は目を輝かせて嬉しそうにしていた。